この記事では、親の「ことば」や日々の関わり、そして絵本の読み聞かせが、子どもの自己肯定感にどう影響を与えるのかをわかりやすく解説しています。
あわせて、自己肯定感を育てるのにおすすめの絵本3冊もご紹介します。
家庭の中で今日からできる、小さな心がけを一緒に見つけていきましょう。


そもそも「自己肯定感」って何?
自己肯定感の基本的な意味
「自己肯定感」とは、簡単に言えば**「自分は自分でいい」「自分には価値がある」と思える気持ち**のことです。
たとえば、うまくできなかった日も「まあ、そんな日もあるよね」と思えたり、人と違っても「これが自分らしさ」と受け止められたり。
自己肯定感が育っていると、そんなふうに自分自身をまるごと認め、前向きに生きる力が備わっていきます。
大切なのは、誰かと比べるのではなく、自分の存在そのものを「大切」と思えること。
これは、テストでいい点をとることや、早く歩けることよりも、もっと根っこの部分にある感覚です。
子どもたちが毎日を安心してすごし、「わたしは、ぼくは、このままでいいんだ」と思えるような土台を育てていくこと。
それが、子育てにおける大きなテーマのひとつでもあります。

乳幼児期から育まれる心の土台
自己肯定感は、思春期や大人になってから突然育つものではありません。
その芽生えは、実はとても早く、0〜6歳の乳幼児期から始まっていると言われています。
たとえば、赤ちゃんが泣いたときに、親がやさしく抱っこしてくれること。
少し大きくなって、子どもが描いた絵を「ステキだね」と笑顔で受け取ってくれること。
そうした日々の関わりや、あたたかい言葉の積み重ねが、自己肯定感の土台をつくっていきます。
特別なことをしなくても大丈夫です。
子どもにとっては、「自分の気持ちをわかってくれる」「どんなときもそばにいてくれる」という安心感こそが、自分を信じる力になります。
そしてその安心感は、親や保育者など、子どものすぐそばにいる大人のことばやふるまいから生まれていくのです。

「ことば」が子どもの自己肯定感に与える影響
何気ない声かけが心に残る
私たち大人にとっては何気ないひとことでも、子どもにとっては心に強く残る「ことば」があります。
たとえば、
- 「よくがんばったね」
- 「できてうれしいね」
- 「あなたといると楽しいよ」
そんな前向きな声かけをもらった子どもは、自分の行動や存在そのものに価値を感じられるようになります。
それが、少しずつ「自信」や「自分を好きになる気持ち」につながっていくのです。

反対に、「どうしてできないの?」「また失敗したの?」といった否定的な言葉が続くと、子どもは「ぼくってダメなんだ」「わたしは嫌われているのかな」と感じやすくなります。
もちろん、親だって完璧ではいられません。ついイライラしてしまう日もあります。
でも、大切なのは日々の中でどんな言葉を多く伝えているかという全体のバランスです。
子どもにとって、自分を応援してくれることばは“心の栄養”になるのです。
感情に寄り添う言葉の力
子どもが泣いたり怒ったりしているとき、
私たちはつい「泣かないの!」「怒らないで!」と言ってしまいがちです。
でも、感情を押し込めさせるよりも、まずはその気持ちを言葉にして受け止めることが、自己肯定感を育む第一歩になります。
たとえば、
- 「悲しかったんだね」
- 「悔しかったよね」
- 「そんなふうに思ったんだね」
こうした言葉は、「自分の気持ちはわかってもらえる」「どんな感情もあっていいんだ」と感じるきっかけになります。
感情に寄り添ってもらった経験は、「自分の気持ちを大事にしていいんだ」と子ども自身が学ぶ時間になります。
それは、やがて人の気持ちにも寄り添える力へとつながっていきます。
このように、親の「ことば」は、子どもにとって世界そのもの。
やさしいひとことが、子どもを励まし、安心させ、自分を信じる力を育ててくれるのです。

絵本の読み聞かせがもたらす効果
安心できる親子の時間
絵本の読み聞かせは、ただ「本を読む」だけの時間ではありません。
それは、子どもにとって「親に見てもらっている」「自分だけの時間をもらっている」と感じられる特別なひとときです。
ひざの上に座ったり、ぴったり寄り添ったりして聞く絵本の時間は、まさに“心のスキンシップ”。
親の声のトーンや表情、ぬくもりとともに、「安心感」「信頼感」「愛されているという実感」を届けてくれます。
特に小さな子どもにとっては、まだ言葉では表現しきれない思いも多いもの。
そんなとき、親が絵本を通して「今ここにいるよ」「あなたと一緒にいるよ」と伝えてくれる時間が、心の土台となっていくのです。

絵本の登場人物が「自己肯定感」のモデルに
絵本のなかには、自分を好きになったり、失敗しても前を向いたり、誰かと助け合ったりする主人公がたくさん登場します。
子どもたちはそんな登場人物に自然と共感し、自分の姿を重ねて物語を体験していきます。
たとえば――
・失敗しても「やってみてよかった」と思える子
・みんなとちがっても「これがわたし」と胸を張る子
・「だいじょうぶ」と自分に言い聞かせて進んでいく子
こうした姿を通じて、「ぼくも大丈夫かも」「わたしもこうしていいんだ」と感じるきっかけになります。
絵本のなかの世界は、子どもにとっての“心のモデルハウス”のようなもの。
目には見えないけれど、確実に「自分を信じる力」や「安心して挑戦する力」を育ててくれるのです。


自己肯定感を育てるおすすめ絵本3選
自己肯定感を育むには、「あなたはそのままでいいんだよ」と伝えてくれる絵本を、日々の中にそっと取り入れてみるのもおすすめです。
ここでは、読み聞かせを通して子どもにやさしく届く、3冊の絵本をご紹介します。
『あなたがだいすき』
作・絵:鈴木まもる/ポプラ社
「どんなあなたも、ぜんぶだいすき」。
そんなメッセージが、あたたかな動物たちの姿とともに描かれています。
この絵本は、親から子への無条件の愛情を、まっすぐに伝えてくれる一冊です。
失敗しても、泣いても、怒っても…それでも「だいすき」と言ってもらえることが、子どもにとってどれほど心強いか。
読んでいる親の方が、じんわりと胸があたたかくなるかもしれません。
声に出して読むたびに、「あなたがいるだけでうれしい」という思いを伝えられる絵本です。
『みんなであなたをまっていた』
作:ジリアン・シールズ 絵アンナ・カリー/ほるぷ出版
あなたがうまれてくるのを、家族みんなが待っていました。
部屋の準備をして、ベッドを整えて。
家族みんなが子供の誕生を心待ちにしていた様子が、穏やかな空気感で描かれています。
あなたはあなたでいるだけでいい。そんな愛情に溢れた一冊です。
『わたしのワンピース』
作・絵:にしまきかやこ/こぐま社
うさぎさんが作った白いワンピースが、さまざまな模様に変化していく物語。
リズミカルな繰り返しと、自由な発想が魅力のロングセラーです。
この絵本は、自分で選ぶ、自分で楽しむ、「わたしらしさ」そのものを楽しめる一冊です。
うさぎさんは、人に合わせることなく、自然の中で気持ちよくワンピースを変えていきます。
そこには、「こうでなければいけない」という制限はなく、ありのままを楽しむ姿勢が描かれています。
読んだあと、きっと子どもは「わたしのワンピースはどんな模様?」と想像をふくらませながら、自分を肯定する気持ちを育んでいくことでしょう。

おわりに|親の「ことば」と「読み聞かせ」が贈る心の栄養
子育ての日々は、うれしいことばかりではなく、時には戸惑いやイライラもつきものです。
そんな中でも、やさしいひとことや、読み聞かせの数分が、子どもにとってかけがえのない「心の栄養」になります。
完璧な親になる必要はありません。
でも、「大好きだよ」「がんばってるね」「一緒にいるよ」という言葉や時間が、
子どもたちの中に「わたしっていいな」「ぼくって大丈夫」という感覚を、少しずつ育てていきます。
絵本とことばの力を借りて、今日も少しだけ、子どもの心に寄り添ってみませんか?
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