【IMAX鑑賞レポ】30年ぶりに出会った『もののけ姫』──大人になってこそ響く“生きるということ”

書評・レビュー

小学生のころ、映画館でもののけ姫を観たときのことを今でも覚えています。

タタリ神の不気味さに息をのんで、アシタカの勇ましさに憧れて、迫力ある映像にただ「すごい!」と圧倒された。

あのときは、物語の奥にある意味などわからず、ただ目の前の映像に心を奪われていました。

それから約30年。

今回、IMAX版『もののけ姫』を劇場で観る機会を得て、改めてこの作品が“ただのアニメ映画ではない”ことを思い知らされました。

あのとき感じた興奮とはまったく違う、胸の奥がじんわり熱くなるような感情。

映像の美しさだけでなく、“生きること”“信じること”“共に在ること”を静かに問われているような時間でした。

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IMAXで感じる、世界の息づかい

私が観たのは、映画館で最も大きなシアター。

スクリーンいっぱいに広がる緑、風、光、そして血の色。

IMAXならではの没入感に、思わず息を呑みました。

草を踏みしめる音、風が木々を揺らす音、矢が放たれる瞬間の空気の張りつめ方。

そのどれもが、まるで自分も同じ世界の中に立っているような臨場感を生み出していました。

アシタカが駆けるときのヤックルの息遣い。

サンが戦うときの鋭い呼吸。

それぞれの“生きている重さ”が、スクリーンから確かに伝わってくる。

CGではない手描きの線が持つ温かさや揺らぎが、IMAXの大画面に拡大されても決して薄れず、むしろ一層“生の質感”を増していたのが印象的でした。

まるで画面の向こうに、もうひとつの現実が存在しているかのような不思議な感覚——それが、今回の最大の感動でした。

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キャラクターたちの「生きる理由」に触れる

年月を経て改めて観ると、登場人物たちへの感じ方がまるで違いました。

子どもの頃は、「誰が悪で誰が正義か」という単純な構図で見ていたのだと思います。

けれど今は、それぞれが“生きるための選択”をしているのだと、痛いほどに理解できるようになりました。

アシタカ

呪いを受けて村を追われ、ただ一人、見知らぬ地へと旅立つ彼。

おそらくまだ10代の少年が、怒るでもなく、恨むでもなく、静かに運命を受け入れる姿に胸が締めつけられました。

ヤックルにまたがり、風を切って走る姿の美しさと切なさ。

その背中には、迷いや恐怖を押し殺し、それでも“生きたい”“知りたい”という意志が確かに宿っていました。

彼の「曇りなき眼で見定める」という言葉が、今の時代にも強く響きます。

分断や対立が当たり前のようにある世界で、アシタカのように真実を見つめるまなざしを持つことの難しさ。

それでも、そうありたいと願う心の強さ。

彼の姿に、自分も少しでもそうありたいと思わずにはいられませんでした。

サン

サンのまなざしは、まっすぐで、どこまでも純粋。

人間を憎みながらも、傷ついたアシタカを懸命に介抱する姿には、根底にある“慈しみ”がにじんでいます。

モロの優しさを受け継いでいるのか、それともサン自身が本来持つ心の柔らかさなのか。

ふと、「もしサンが人間として普通の村で育っていたら、どんな少女になっていたのだろう」と想像してしまいました。

それでもきっと、彼女は同じようにまっすぐで、自分の信念を曲げない子だったのだと思います。

“自然の子”として生きるサンの凛とした強さに、女性としても心を打たれました。

エボシ御前

エボシを見つめる視点も、昔とはすっかり変わりました。

神をも恐れぬ強さを持ち、タタラ場の民を導く彼女。

一方で、谷に落ちた牛飼いを見殺しにする冷酷さもある。

その残酷さの裏にある“現実”を、今の私は少し理解できる気がします。

飢える者を減らし、女たちに仕事を与え、社会を作り上げるためには、理想だけでは生きられない。

彼女の選択は、痛みを伴いながらも「生かすための覚悟」なのだと感じました。

おそらく私と同年代くらいの女性ではないかと勝手に思いながら、「この人はどんな人生を経てここまで来たのだろう」と、彼女の過去に思いを馳せました。

ただ“怖い人”ではなく、信念と責任を背負う一人のリーダー。

時代が違えば、彼女のような女性を理想として語りたくなる人も多いのではないでしょうか。

ヤックル

そして忘れてはいけないのが、ヤックルの存在。

アシタカとの絆の深さには、何度観ても涙がこみ上げます。

戦いや逃走の緊迫した場面でも、アシタカの声に応じて動くその忠実さ。

恐怖を感じながらも寄り添う姿に、言葉を超えた信頼関係を感じました。

生き物の“賢さ”や“健気さ”がここまで心に響くのは、ヤックルが“キャラクター”ではなく“生きる者”として描かれているからだと思います。

人と自然のあいだにある、永遠の問い

『もののけ姫』の根底に流れるテーマ——“人間と自然の共存”。

これは、過去の物語ではなく、今まさに私たちが向き合うべき問題そのものです。

人間は便利さや豊かさを求めて、自然を切り崩してきました。

けれど、その代償として、何か大切なものを見落としてはいないだろうか。

自然側の怒りや悲しみを、サンや山犬たちが代弁しているように感じました。

文明が進んでも、結局は「どう生きるか」「どう関わるか」という問いに戻ってくる。

そのシンプルでいて答えのないテーマを、宮崎駿監督はあの時代に描いていたのだと思うと、改めて尊敬の気持ちでいっぱいです。

大人になった今だからこそ味わえる深み

子どもの頃は「難しい」と思っていた場面の意味が、今になってすっと心に落ちました。

“理解できるようになった”というより、“感じ取れるようになった”という方が近いかもしれません。

『もののけ姫』には、宗教・民族・自然信仰など、日本の文化や思想の根が息づいています。

映像の隅々に散りばめられたヒントを見つけるたびに、「ああ、もっと知りたい」と思う。

学べば学ぶほど、この作品をさらに深く味わえる気がしています。


まとめ:今この瞬間に観られたことへの感謝

エンドロールが流れ終わっても、しばらく席を立てませんでした。

心の中が満たされているのに、どこか締めつけられるような余韻。

このタイミングでこの作品を観られたこと。

大人になった今だからこそ、感じ取れたこと。

それが何よりの幸せでした。

もし観ようか迷っている方がいたら、ぜひ劇場へ足を運んでほしいです。

スクリーンの中で息づくアシタカやサンが、きっとあなたの心にも“生きる力”をそっと残してくれるはずです。

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